第6章 デートの練習
会話が噛み合わない。ふと、あ、そういう事かと、私は人差し指を出して自分の頬に向かって円を描くようにくるっとして見せた。
「ピンクのチーク入れてるの。照れて赤面してるんじゃないから」
それを見て五条先生はまたクスって笑う。何がおかしいんだろ。
「チークもだけどいつもと雰囲気違うよね。そのふわっとしたニット、僕の好みだよ」
「……そりゃどうも」
ぶっきらぼうに返事したけど、これは本当に照れくさくて軽く下を向いた。
実はデートだって意識しすぎたのか、今朝は5時半に目が覚めて、そこから眠れなくなった。
別に服装なんて何でもよかったんだけど、折角五条先生と出掛けるなら普段着じゃなくお洒落しようかなぁなんて考えて。
朝の記憶を思い出す――。
「あったこれこれ」
クローゼットの中をごそごそ探して、クリーニングに出して置いてあったアンゴラニットを手にする。
ふんわりとしてあったかいベージュ色のニットだ。ボトムスには茶系のプリーツスカートを合わせた。
五条先生はこういうほんわか優しい雰囲気が好きかな? なんて考えて。メイクとヘアアレンジも頑張って、30分以上鏡と睨めっこした――。
「髪はね……ジョーのドレッドヘアーに合うように、サイドを数本ねじり編みしたんだ」
「いいねぇ。似合ってるよ」
思わず笑みがこぼれる。お世辞でも嬉しい。そのままニコって返すと「いい顔するね」って国宝級の笑顔が戻ってきた。
デートって言葉の響きがそうさせたのか、朝の時間はどことなく非日常で、ふざけながらもほんの少し甘ったるさを感じながら、私たちは渋谷へと向かった。