第6章 デートの練習
「あの……ジョー」
「んーなに?」
「私、今日は勝負下着じゃないからね」
「え?」
五条先生はきょとんとした顔をして、それから二人の間に沈黙が入り込んだ。なにこの空白の時間は。
ひょっとして私、変なこと言ってしまった? 五条先生が"抱く"なんて単語を使うから!
だけど冷静に考えたら、私の妄想が一人歩きしていたような気がする。恥ずかしくて顔から火が出そうで、何か言わなきゃとしどろもどろになった。
「あっ、あのね」
「フフッ、僕とそのつもりだった? 勝負下着じゃないけどよろしくって」
「違う違う! そうじゃない」
「真っ赤になっちゃって」
「いやだから違うの。えっと……ほら、雨が降ったら、ゲリラ豪雨とか落雷とか雪とかあるかもしんないじゃん? それで帰れなくなって、そういうとこ泊まる可能性もゼロじゃないでしょ。そんで服が濡れたりしてたら脱ぐでしょ。だからその……色気ない下着だと萎えちゃうかなぁって。あっ萎えるって、そういうあれじゃなくて――」
「可愛いすぎでしょ」
クスって笑う仕草にドキッとわずかに胸の音が鳴る。
五条先生の唇が緩やかに弧を描いたかと思うと、一歩こちらに近づいて、身を屈め、私と同じ視線の高さに合わせてきた。青い瞳が私を真っ直ぐ見つめる。
「千愛にそんな風に可愛く誘われたら、百パー男は抱くね」
「……な、なに言ってんの、もぅ」
「七海もイチコロじゃなーい?」
「ほんと!? じゃなくって……だから誘うつもりなんてないの。さっきのセリフは痛恨のミス」
唇をぎゅっと引き結ぶと、青色の瞳は楽しげに揺れた。