The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「マイキー君…」
こちらへと歩いてくる佐野先輩の頬には、殴られた形跡があり赤く腫れている。
痛々しい痕だが…その怪我よりも佐野先輩が落ち着いている事に驚いた。
もっと慌てるか、それとも怒った顔をしているのではないかと正直思っていたから…。
だから落ち着いた様子に驚いてしまう。
「ドラケン君が!!!」
「聞こえてたよ。待合室どこ?」
「マイキぃぃ」
「マイキーっ!!」
「マイキー!!オレ……!!」
「みんなうるせぇよ。病院なんだから静かにしろ!」
慌ただしい空気は佐野先輩の静かな言葉であっという間に静まり返る。
そして佐野先輩はゆったりと足つきで歩きながら、待合室のソファに座ってから手術室の『手術中』の赤のライトがついた看板を見上げた。
「……ケンチンはさ、昔っから言った事は絶対守る奴なんだ。こんなトコでくたばんねぇよ、そんな不義理絶ッ対ェしねぇ」
「佐野先輩…」
「アイツ、オレと天下取るって約束したからな。だからエマ、三ツ谷、ぺーやん、タケミっち、イズミっち。ケンチンを信じろ」
その言葉に周りの全員が何かを思い出したかのように、少しだけ落ち着いた空気へと変わった。
でもさっきの言葉はまるで、佐野先輩自身を落ち着かせているような言葉にも聞こえる。
ああは言っているが、きっと佐野先輩も内心は焦っていたはず。
だけどそれを見せないのは、彼がその弱さを見せたくないからなのか…それとも違う理由があるのか……。
(どっちでも良い……だけど、龍宮寺先輩。もしアンタが死んだら俺はアンタを憎むからな)
心でそう呟いてから、壁にまたよりかかる。
すると三ツ谷先輩が険しい表情でこちらに来ると、怪我をしている左肩に壊れ物に触れるかのような手つきで触れてきた。
「この肩…どうした?」
「あ、ああ…コレ、キヨマサの取り巻きのレッド…?ていう男がタクヤ、幼馴染にナイフ突き刺そうとしてて、それ庇ったら切れちゃって」
「血、結構出たんだろ…。服が真っ赤になってる…」
「大した怪我じゃないですよ…」
だから、俺より痛そうな顔をしないでくれ…。
そう思いながら、俺よりも痛そうに眉を下げて眉間には皺を寄せている三ツ谷先輩を見上げた。
「痛かっただろ…」
「このぐらい平気ですよ」
「平気じゃ、ダメなんだよ…。痛いもんは痛いだろ……」