The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
「相変わらず、いい匂い…」
髪の毛から香る匂いに、少し気分が落ち着いている和泉だがふと手首を見れば青あざがあった。
イヌピーに押し倒された時に出来たものである。
その青あざを見ると、また内側に虫が這っているような感覚が蘇っていく。
だが和泉はそれに気付かないふりをした。
「にしても…でかい」
普段来ているスウェットだからか、和泉の体には大きくブカッとなっている。
腕や足にウエストもガバガバに余裕がある状態だ。
「……でかい。あと匂いが、三ツ谷先輩だ」
フワッと鼻腔を掠める三ツ谷の匂い。
柔軟剤の匂いなのだろうが、本人特有の匂いもするなと思いながら脱衣所を出てリビングへと向かった。
「お、出たか」
「お風呂、ありがとうございました…」
「やっぱ、ブカブカだなぁ…」
リビングへと向かえば、テレビを見ている三ツ谷の姿がありブカブカな自分のスウェットを着ている和泉を見てから苦笑を浮かべた。
体格差がこうも出るのだな。
そう思いながら和泉に座るよう促してから、台所へと向かっていく。
「風呂出たあとは水分補給した方がいいからな。ホラ」
「ありがとうございます…」
「にしても…髪の毛下ろしてたら、ほんとに女の子だな」
麦茶の入ったグラスを受け取った彼女を見て、三ツ谷は隣にあぐらをかいて座った。
そして乾かしたばかりの髪の毛を一束掬ってから、フワフワした感触を味わう。
「じゃあ、オレも風呂はいってくるか。部屋にいるか、ここに居るかどっちでも良いからな」
「はい…」
「ん、じゃあ行ってくる」
クシャッと頭を撫でた三ツ谷は、予め用意していたスウェットを持ってから風呂場へと消えていった。
その背中を見送った和泉は、グラスに口を付けてから冷えた麦茶を1口飲む。
冷えた麦茶が喉を通っていき、風呂で熱くなった体がスーと冷えていくのが分かった。
そんな感覚を覚えながら和泉は目線を下へと向ける。
(このまま、青宗とはどうなるんだろ…)
あんな別れた方をした。
もう次からはまともに話せないかもしれない、親友という関係が壊れたかもしれない。
「嫌だ、な……」
好きと言ってくれた青宗の気持ちを踏みにじっておきながら、なんて自分勝手なセリフなのだろうか。