The best happy ending【東リべ/三ツ谷】
第3章 8・3抗争
そして三ツ谷の手に擦り寄るように、少し顔を傾けてから和泉は目を細める。
夏で体温が上昇して熱い筈なのに、この手は嫌にならないのが不思議と思いながら。
すると添えられている手が微かに動き、親指で三ツ谷はゆっくりと和泉の目元を擦る。
そして優しい微笑みを浮かべた。
「これから、家に帰るのか?」
「……え、あ……いや」
その質問に和泉は言葉を詰まらせる。
この状態で家に帰れば間違いなく、嫌な記憶が蘇ってくるのは確実。
だからホテルかネッカフェに行こうかと考えていた。
「帰らねぇなら、オレの家に来ないか?ルナマナはもう寝ちまってるけど」
「……迷惑に、なりませんか?」
「ならない。それ所か来てくれた方がオレは嬉しいけどな…それと無理に何があったは聞かないから安心してくれ」
「……じゃあ、行きます」
「ん。じゃあほら」
和泉が立ち上がろうとすると、三ツ谷が手を差し伸ばしていた。
その手を思わず凝視すれば、三ツ谷がゆっくりと確かめるように彼女の左手を優しく掴んだ。
手を繋いでも拒絶されないだろうか。
そう思っての行動だったが、和泉からの拒絶は無く何処かホッとした。
「和泉の手は、冷たいな」
「あ…すみません」
「ん?いや、冷たくて気持ち良いなって。この時期に手ぇ繋いだら涼しくなるしな」
「そうですか」
小さく微笑むのが見えて、三ツ谷はホッとしながらゆっくりと歩き出した。
手を繋いで驚いた事といえば、やはり男装しいても少女の小さな手をしている事。
「なんなら、今日泊まっていけば良い。ルナマナも喜ぶし」
「え、良いんですか?」
「そんな状態で帰せれねぇよ」
眉を下げながら笑う三ツ谷に和泉は目を開く。
そして繋がれている手温もりが、何故か酷く伝わってきて緊張感が芽生えた。
骨ばっていて、喧嘩をして荒れたのか少しカサついた手。
だけど夏場なのに鬱陶しさを感じない温もりがあり、和泉はその手が嫌いではなかった。
(暖かい…。なんでこの人が居るだけで、こうして話て手を繋がれただけで落ち着くんだろう……)
不思議な男だ。
和泉はそう感じながらも、その手の温もりと三ツ谷の優しさに少しだけ泣きそうになった。
その温もりと優しさが懐かしくて。