第10章 愛、憎悪、殺意<壱>
「なんなのよ、こいつ・・・!!」
「頭を再生しやがった、あの野郎!糞が!!畜生がアア!!」
汐と実弥が苛立ちのあまり声を上げ、悲鳴嶋が直ぐにいさめた。
「攻撃し続けろ!!頸を落とされた直後で体が脆いはずだ!!無惨ほどの速度では再生していない!!頸を狙え!!何度でも!!」
三人が一斉に躍りかかり、刀を振り上げた。
――ウタカタ 参ノ旋律・転調
――繋縛歌!!!
汐の歌が黒死牟を拘束するが、直ぐに振り払われ背中の触手が周りを薙ぎはらった。
――岩の呼吸 参ノ型
――岩軀の膚
悲鳴嶋の鉄球と鎖が汐を守るように飛び交い、触手を防ぐ。
(克服した。これでどんな攻撃も無意味。太陽の光意外は。これで私は、誰にも負けることは・・・)
黒死牟は、振り上げられた実弥の刀に映ったものを見て、思考が停止した。
そこには、背中から触手を生やし、六つの目でこちらを見ている異形があった。
(何だこの、醜い姿は)
その瞬間、黒死牟の脳裏に二つの声が聞こえた。
『兄上の夢は、この国で一番強い侍になることですか?俺も兄上のようになりたいです。俺は、この国で二番目に強い侍になります』
『巌勝様のような、ご立派なお侍様と生涯を共に過ごせる方は、幸せだと思います。わたくしも、そんな方とお会いしたかったです』
それは、彼がもっとも疎ましく、憎いと思っていた二人の言葉。
(侍の姿か?これが・・・これが本当に、俺の望みだったのか?)
黒死牟が自分の姿に、存在に疑問をもったその時。
無一郎に刺された場所が突然崩れ落ちた。
そして間髪いれずに、悲鳴嶋の鉄球、実弥の刀が次々と穿たれる。