第5章 風が変わる
「カナコ暴れて落ちるなよ
エルヴィン落とすなよ こいつは俺の宝物だからな」
面倒な事や回りくどい事が嫌いなリヴァイの愛情表現はストレートで時々恥ずかしい…でも嬉しくもあって乙女心をキュンとさせる
「宝物か…分かった大事に扱おう 約束する」
前に座ると鞍を掴み体を支えた エルヴィンが少し前屈みになり体を密着させる
「少し私に体を預けるようにしなさい その方が楽だから」
エルヴィンが軽く馬の横腹を蹴ると馬がゆっくりと歩き出した
前を行く馬車がどんどん離れて行き エルヴィンと2人きりになる
「エルヴィンさん馬車が…」
「カナコは乗馬は初めてだろう いきなりあのスピードの馬を乗りこなすのは無理だな それと私はこの作戦のリーダーだ 馬車が何処に向かっているか知っているから安心しなさい」
「カナコには聞きたい事が沢山ある 話をするにはこのくらいゆっくりと歩かないと 馬上では体が揺れて舌を噛む」
聞きたい事…私の秘密だ
自分で2人きりなる状況を作ってしまった リヴァイの深いため息の理由は 馬に乗れるとはしゃいだ事じゃ無かったかぁ…
だから「気を付けろ」って言われたんだ
噛まれた耳が疼いた
調査兵団 壁外で巨人相手に戦い 外の世界にあるのは希望か絶望か それを調査する兵団 壁外へと向かう調査での死亡率はかなり高いとファーランが言ってた
リヴァイはエルヴィンとミケの2人がこの隊のリーダーだと言った
歳はリヴァイと同じかな だとしたら8年は巨人と戦い生き抜いている事になる
そんな人に私は何を気を付けたらいいんだろう 逃げる選択は無い 駆け引きなんかも私には無理だし
「大事に扱う 約束する」
さっきリヴァイの目を見て よく響く声でそう言ったエルヴィンを信じるしかない
「私の秘密ですね…だぶんエルヴィンさんの欲しい答えでは無いです
でもちゃんと話します だから馬から降りて話しませんか?」
この世界に来て10年…私は20歳になった それに実年齢28歳だし 随分と肝が据わってきた
エルヴィンは景色のいい丘で馬を停めた
先に降りて私に両手を広げる 飛び込めという事かな?
見た目よりも馬上は高く感じて怖い
「大丈夫だ 私を信じなさい」
凛とした声が素敵だ…エルヴィンの前世は絶対王子様だ