第3章 からだと心
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地下街では人の命は軽い 下らない理由で殴られたり 奪われたり 殺されたりする
今日の仕事も下らない理由だった
帰る途中にあの路地を使った カナコには使うなと言っていた路地だ
あの路地は市場で働く住人が多くて安全な方だったが 最近は階段の通行料が上がり仕事が減った 暇な奴らが昼間から酒を飲んだりしていた
今日も男2人が酒を飲み雇い主の愚痴をつまみにしている
「おっ 兄ちゃん」
俺を指差して汚く笑った たまに市場で見かける男達だ
「いつも隣に連れてる 兄ちゃんより背の高い女…ちらっとしか顔は見えなかったけどよ 意外と別嬪なんだな」
「あぁ…いい足をしてた すらっと長くてさ あの足になら絡まれたいねぇ」
「男とさっきまでイチャイチャしてたぜ」
「……女はどこに行った?」
「男に抱かれながら表通りに行っちまったなぁ… 」
顔を見られただと?足ってなんだ?馬鹿が何処に連れていかれた!
表通りが見渡せる高台に向かい見るとカーキ色のマントを着たカナコがベンチに男と座っているのが見えた
怯えていると思い急いで広場に向かうと じゃれあい笑い合ってキスするように顔を寄せる男女がいて 女はカナコで男はあの日殺さなかった銀髪の男だった
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カナコを連れて家に戻りお湯を沸かす
帰り道でもカナコは何も喋らなかったが 俺が紅茶を入れてテーブルの向かいに座るまで ずっとうつ向いていた
「路地を使っていたのか?」
カナコは地下街の事については世間知らずを自覚してたはずだ
「ずっと使ってなかった…でも半年も経っていたし…私も地下街の事少しは分かってるって思ってた…あの路地は市場の人が多いから安全だって…荷物も重かったから今日だけ…近道したの……ごめんなさい……」
「その結果がこれだ 絡まれた2人にカナコは顔を見られてる…」
「えっ……隠して…」
うつ向いていたカナコが顔を上げた
「見られてる ちらっと顔が見えたと言われた」
「ごめんなさい…」
カナコの声は震えかすれている
泣くのを我慢していたみたいだが 流石に顔を見られたショックもあるのかポロポロと頬を濡らした