第35章 約束
「とんでもない話だ‼︎」
怒りのままにそう言ってしまうと止まることはもう出来ない。
どちらにしてもほの花が苦しんでる最中に嫁探しをしていたのは明白だ。
「あぁ⁈」
「ふざけないで頂きたい!自分の個人的な嫁探しに部下を使うとは‼︎」
「はぁ?!何勘違いしてやがる‼︎」
「ぜ、善逸…!違うの、落ち着いて?」
ほら、ほの花にまで気を遣わせて…可哀想に。
どれだけほの花が泣いてたと思ってるんだ。あんたを想って…。
それなのに…当の本人は嫁を作るためにウハウハだったとは人でなしにも程がある。
ほの花の手を握って「大丈夫だよほの花。」と言いながらおっさんに向き合えばまたビシビシと恐ろしい音が聴こえて来たけど怯まなかった。
「いいや、言わせてもらおう‼︎アンタみたいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも!だがしかし!鬼殺隊士である俺たちをアンタ嫁が欲しいからって‼︎」
後ろ手でほの花を庇うようにしておっさんを睨みつけたが間髪入れずに臨戦態勢になる。
「馬ぁ鹿かテメェ‼︎俺の嫁が遊郭に潜入して鬼の情報収集に励んでんだよ‼︎定期連絡が途絶えたから俺も行くんだっての!」
どんな言い訳を言ったとしてもほの花が受けた屈辱は計り知れないのだ。
「まぁそう言う妄想をしていらっしゃるんでしょ?」
「クソガキが‼︎これが鴉経由で届いた手紙だ‼︎」
べしべしっと投げつけられるその手紙の束に悲鳴をあげてしまう弱っちい俺だけど、ほの花は大事な友達だ。絶対に負けるわけにはいかない。
守るように背中にほの花を隠すとおっさんに向き合った。
それなのに俺の決意の出端を挫くかのように隣にいた炭治郎が話し出した。
「随分多いですね。かなり長い期間潜入されてるんですか?」
たった今、かっこよく「人でなし野郎‼︎」と言ってやろうと思っていたというのに炭治郎のせいで台無しだ。
「三人いるからな、嫁」
しかし、さらりと言った筋肉の化け物の発言に俺の怒りは頂点に達した。
嫁がいるのは本当だというのか?
ほの花と別れたばかりで?
しかも三人?!
震える体を制して上官に向かって暴言を吐くのを止められなかった。