第35章 約束
"いざという時に捨て置けないならば師弟関係を解消したい"
ほの花の頑なな態度の根底を見た気がした。
コイツは俺が自分に気を取られることを危惧しているのか。
俺が守るべきは嫁たちだと言う。
そんなことは分かっている。
言われなくともアイツらとの絆は深い。
里から出てきた時、地獄に落ちると思っていたのにアイツらのおかげで持ち直したことは感謝しかない。
今回だって信頼しているからこそアイツらに潜入調査を頼んだのだ。
だからと言ってほの花のことを信頼していないからではない。
どうしてもほの花にだけは頼めなかった。
自分の心が止めるのだから仕方ないだろう?
「…ほの花、お前のことは信頼しているが、心配もしてる。師弟関係は解消しないし、任務にも連れて行く。ただ無茶はしないでくれ。約束できるか?」
「はい!承知しました!」
「…返事だけはいいな…。」
それでも認めざるを得ないのは、師弟関係を解消されてしまえばほの花との接点がもっと無くなってしまうからだ。
ひとつ屋根の下で暮らすことは嬉しいこともあれば、問題もある。
正直、最近のほの花との同居生活は自分の欲との戦いで色んな意味でツラかった。
だとしても彼女がそばにいると言うことが物凄い安心感があった。
嫁たちには感じない。
独特の安心感だ。そばにいれば呼吸が落ち着き、微睡みに意識を飛ばしてしまいそうなほどの安心感。
ほの花の匂いが、感触が…俺の欲を掻き立てるだけでなく布団のように温かくしてくれる。
四人目の嫁に…と考えたこともあった。
だけど、ほの花に立ち所にその気がないことを知って諦めるしかなかった。
それにほの花への独占欲は唯一無二のものとなっていた。
激しい情欲も独占欲も
その全てがほの花ただ一人にだけ反応してしまう不思議な現象。
この現象に俺はまだ名前をつけられずにいる。
分からないから。
「師匠?約束です。私と師匠はただの師弟関係です。大事なものの順番を絶対間違えないでくださいね?」
「…わーってる。」
命の順序
それは守るべきものの順序
第一に嫁達
第二に一般人
第三に俺
それは俺が掲げていた唯一無二の命の順序。