第35章 約束
ほの花の体を抱き上げると後ろにいた三人の餓鬼についてくるように伝えて藤の家まで走っていく。
「ちょ、し、師匠!!私も!走れるん、ですけど…!」
「喋んな。舌噛むぞ。」
「……む。」
アイツらと仲良く並んで走らせるか。
ただでさえ、コイツには苛ついていると言うのにこれ以上、ほの花の好きにさせてたまるか。
俺はまだ諦めたわけではない。
どうやってほの花を家に帰らせようかと言うことで頭はいっぱいだ。
アイツらが行くならコイツは必要ない。
帰ってもらうためにはどうしたらいいか。
しかし、俺のそんな気持ちを理解しているのか腕の中にいるほの花から痛いほどの視線が突き刺さる。
「……ンだよ。師匠を睨みつけるたぁ…「私、帰りませんからね。」…………あ?」
まさか心を読まれた?
いや、そんなわけない。
顔に出ていた…?
「私のことをどうやって撒こうか考えてましたよね?師匠。」
真っ直ぐに突き刺してくる視線は鋭利な刃物のような殺傷力。
俺の心臓を一刺しするとその場での思考回路は完全に停止する。
「帰りませんから。」
「……また脅す気かよ。話を蒸し返すなと言ったのはお前だろうが。今更…」
「あれは冗談です。別に本気で人に言おうなんて思ってはいませんよ。」
勝気に笑うほの花はいつもの彼女よりも頼り甲斐を感じるけど、それと同時に自分が望んでいない方向へとどんどんと進んでいってしまっているように感じた。
「それにしても私には一言も言わずに人攫いしようとしたり、炭治郎達を連れて行こうとしたり…どういうつもりですか。」
「っ、だから…!それは…お前が…」
「師匠。あなたが守るべきは奥様達三人だけです。私じゃない。私はあなたの継子です。代わりはいくらでもいます。」
凛としたほの花の声が遠くの方で聴こえた気がした。
目の前で俺を見つめている彼女は…
ただの継子だと言う。
ならば…俺の心がこれほどまでにお前を欲してしまうのは何故なんだ。
"代わりはいくらでもいる"
そう言ったほの花はどこまでも美しくて、儚かった。