第35章 約束
突然目の前に現れた自分の継子であるほの花に俺は度肝を抜かれた。
「…ほの花…?!お前、何で此処に…?」
今日はお館様ところに行っている筈。
此処に来るとは聞いていない。
何ならコイツにだけは知られずに事を済ませたかったというのに。グダグダとしているうちに一番避けたい状況になっちまったことに頭を抱えることになろうとは…
「しのぶさんに産屋敷様の薬の件で用事があったので来ました。まずはアオイちゃんを放してください。」
「…今、解放するところだ。ほらよ。」
下に降りて担いでいた女を渡してやると案の定、じぃっと痛い視線に射抜かれた。
「ほの花ちゃん…!」
「ごめんね、アオイちゃん!うちの師匠が…」
おいおい、俺の尻拭いを継子がしてるみたいな言い方やめろよな。
任務に連れて行こうとしただけだろうが。
しかも、鬼殺隊士だぞ?
「…へーへー、悪かったな。おら、行くぞお前ら。」
解放したその女をほの花がよしよしと撫でているのを横目に三人の餓鬼共に声をかけて、蝶屋敷から出たところで今度はほの花に腕をがっちり掴まれた。
「はい!師匠!任務ですね?!喜んで‼︎」
にこやかに任務に参加しようとしてくるほの花を何とか諦めさせようと頭の中でぐるぐると考えても碌な考えが思い浮かばない。
苦し紛れに拒否だけ伝えてみてもどこ吹く風のほの花。
そして、そんな彼女にタジタジになりながら頭の中で拾い集めた言葉を何とか放つことしかできない俺。
「…………。お前は呼んでねぇ。…家にいろ。」
「言ってることが分かりかねます。どちらの任務ですか?」
「そうだ、おっさん!何処に連れて行く気だ!!」
若干ほの花とのやりとりを見ているだけの竈門と黄頭と違い、ぐいぐいと言葉を発する猪頭に救われる。
ただほの花にだって分かってしまうだろう。
「日本一、色と欲に塗れた街。鬼の棲む遊郭だ。」
雛鶴達だけでなく、正宗達まで連絡が取れないなんて知ればほの花達は居ても立ってもいられなくなるだろう。
だが、それとこれとは話は別だ。
俺はほの花を駆り出すつもりはないのだから。