第35章 約束
宇髄さんは用意した朝餉を食べるとそのまま何処かにふらっと行ってしまって私が産屋敷様の家に行くまで帰ってこなかった。
そのまま遊郭に様子を見に行ってしまったのだろうか。
詳しいことは分からないが、定期連絡を取っているのは知っているので手紙の受け取りに行ったのかもしれない。
大して気にもせずに私は産屋敷様のところに調合に行った。
最近は良くなったり悪くなったりを繰り返していて起きている時間はとても減った。
仕方ないとは言え苦しそうな産屋敷様を見るとついつい力を使ってしまうことも増えていて、帰り道は毎回のように報告のためしのぶさんのところに寄ってから帰るようになっていた。
力を使った後の身体のだるさを感じながらも蝶屋敷に向かうと見覚えのある後ろ姿が屋根の上に乗っているのが目に入る。
そしてその肩に担がれているのは…
(…アオイちゃん…?!何で…?)
その瞬間嫌な汗が背中に伝った。
足早に近づいて行くと同じように塀にのぼった善逸と伊之助がいることにも気付く。
そして宇髄さんが向いてる方向からは炭治郎の声も。
何か揉めている。
そんな様子だった。
息を顰めて近付いて、話を盗み聞きしてしまうと私は拳を握り締めた。
アオイちゃんの代わりに彼らが行くとか行かないとか。
下からなほちゃん達の戸惑いの声。
そして…宇髄さんが私に予定を聞いた理由。
私に悟られないようにでしょう?
何処に行くか把握しておきたくて聞いたんでしょう?
私のことを危ない目に遭わせたくないという記憶が体に残っているんでしょう?昔の宇髄さんのその記憶が。
だけど…あなたが守るべきは私じゃない。
それならば何のために私はあなたの記憶を消したのか。
私は彼の視界に入る位置まで駆けて行くと、炭治郎達を連れて行くと決めたようだった宇髄さんに向かって矢継ぎ早に声をかけた。
「その前に私に何か言うことはありませんか?師匠。」
アオイちゃんの前に
炭治郎達の前に
あなたが一番最初に頼むべきは私でしょ?
あなたの継子なのだから。
間違えては絶対に駄目。