第35章 約束
たかだか女をそう高くもないところから放り投げたくらいでビービーと煩い餓鬼どもが下から煩い。
「何てことするんだ!人でなし‼︎」
「わーん!!落とされましたぁ!!」
放り投げた女を竈門が受け止めたようだが、随分と正義感を振り翳してくるのでため息を吐く。
鬼殺隊である以上、任務は絶対だ。
そんなことも分からないで鬼殺隊士を名乗っているなんて甘いにも程がある。
「とりあえずコイツは連れて行く。役に立ちそうもねぇがこんなのでも一応隊士だしな。」
ほの花を行かせるよりはマシだ。
そんな俺の私情も問題ではあるかもしれないが、仕方ないだろ?
身体中が拒否反応を示しているのだから。
「人には人の事情があるんだから無神経に色々突き回さないでいただきたい!アオイさんを返せ‼︎」
面倒くせぇな。
鬼殺隊が鬼狩りにいかねぇでどうするつもりなのだ。ぐだぐだしてると万が一にでもほの花に見つかったらさらに面倒になる。
「ぬるい。ぬるいねぇ。このようなザマでぐだぐだしているから鬼殺隊は弱くなってゆくんだろうな」
とっとと鬼を滅してやるべきことがあるのだ。
今の俺の照準は俺自身を取り戻すこと。
こんなところで油を売ってる暇はない。
しかし、俺が憂いていると竈門が突然予想外のことを言って退けた。
「アオイさんの代わりに俺たちが行く‼︎」
なるほど、ね。
"俺たち"か。
そう言って自分の領域に入ってきたその男たちにも見覚えがある。
どいつもこいつも火に油を注ぐのが好きなのかね。
「今帰ったばかりだが俺は力が有り余ってる‼︎言ってやってもいいぜ‼︎」
「アアアアオイちゃんを放してもらおうか。例えあんたが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひかないぜ!」
約一名は足まで震えている始末だが、三人いると言うのは正直頭数としては助かる。
ただ……男か…。
睨みつけて少し考えてみたが、まぁ確かに女に拘ることもない。一刻を争うのだ。
潜入してくれるなら早い方がいい。
「あっそぉ。じゃあ一緒に来ていただこうかね。」
「その前に私に何か言うことはありませんか?師匠。」
折角納得しかけたと言うのに、一番聴きたくない声が聴こえてきて俺は下を見下ろした。
そこにいた人物に深いため息を吐くしかできない。
(…最悪だ。)