第29章 停戦協定※
前日、ほの花は情交後に意識を失うように眠りについて、結局夕飯も取らずに朝まで寝てしまった。
こんなことは俺たちからしたらよくあることなのだが、夕飯の時間に瑠璃には苦言を呈された。
「あんた、こんな時間にだき潰してどうすんのよ。」
「仕方ねぇだろ?アイツが派手に可愛いから悪ぃ!!お前のせいでもあるんだぞ!苦言は受けつけねぇ!!」
そうだ。瑠璃の化粧のせいで止まらなかったと言っても過言ではない。
あまりに妖艶で吸い寄せられるように情交に及んでしまったのだから。
「あはは!瑠璃さん、天元様にそんなこと言っても無駄ですよぉ〜。いくら注意しても聞いてくれないんですから!!」
須磨が笑いながら窘めてくるので、呆れたような視線をこちらに向けると諦めたようにため息を吐き、味噌汁に手をつけた瑠璃。
俺も茶を一口啜ると思い出したことを再び口に出した。
「あ、瑠璃。そーいや、ほの花に着せてくれた着物汚したわ。悪ぃ悪ぃ。アイツ、濡れやすいからよ!ハハッ!」
その瞬間、ブッと味噌汁を吹き出した瑠璃は鬼の形相でこちらを睨みつけてきた。
「見てわかんないわけ?!食事中よ!しかも、そんなこと公衆の面前で言わないでよ!ほの花が可哀想じゃない!」
「はぁ?んなこと、もう此処にいる奴らは知ってるわ。お前も慣れろ。んでさ、汚したから買って返すわ。」
「はいはいはいはい!とんでもなく高い着物を買わせてやるわ!!黙って食べなさい!」
ほの花のことはすっかり怒りの対象じゃないようで"可哀想"と庇うほど。辛辣な態度をされるよりよっぽどいいのだから大して取り合わずに食事に手をつけた。
そんな瑠璃の様子を見て、正宗達もホッとした表情を浮かべている。
気にしていないような素振りをしていたが、やはり自分の主人が貶されるのを見るのは多少なりともつらかったはずだ。
悪いことをした。
ほの花が盛大に潮を撒き散らして果てたのは俺の責任でもあるのだから、瑠璃の着物を弁償するのは俺の役目でもあると思っていた。
それなのにまさかそれをほの花に嫌がられるとは思いもしなかった。
俺にとっては嬉しい誤算でもあった。