第29章 停戦協定※
「は?あー、まぁ、そうだろうな。お前、すげぇ潮吹きしてたからなぁ。仕方ねぇだろ。」
ニヤニヤと笑いながらそう言う宇髄さんだけど、何を言っているのだろうか。
あれは他人の着物で、私は貸してもらった立場。
"仕方ねぇ"で済まされるわけがない。
「し、しか、仕方ない…?!?!ちょ、だ、駄目駄目!買って返さないと…!!」
「あー、そういうことな。じゃ、俺が買って渡してやるから気にすんな。全部脱がさずに始めた俺にも非があるからな。」
「…え?て、天元が?」
どうやら私の気持ちは理解してくれたらしいが、提案された内容に私は唇を噛み締めた。
宇髄さんが買って彼女に着物を贈る?
それは彼からしたらごく自然なことかもしれない。自分の恋人がした粗相を自分事と捉えて責任をとってくれるなんて男気があって格好いいと思う…。思うけど…、なんだろう。
ちょっと…嫌だ。
唇を噛み締めたまま、彼を見下ろすと不思議そうな顔を返される。
こんなこと言ったら嫉妬深い女だと思われちゃうかな…。大体、瑠璃さんはもうそういう対象じゃないと分かっている。昨日本人からもう"諦める"とも取れる言葉をもらったのは記憶に新しい。
それでも自分をなかなか納得させられず、その状態が続くと流石に宇髄さんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「どうしたよ?ほの花。…言ってみ?聞いてやるから。」
私の頬に手を添えて優しい眼差しを向けられると、一度目を彷徨わせてから頷いて見せた。
「…あの、私が…瑠璃さんに買って返す、から天元は…いいよ。」
「はぁ?何で。俺が出してやるって。気にすんなよ。そんなこと。」
「ち、違くて…!お金のこと言ってるんじゃない…の!」
宇髄さんは私のこと鈍ちんって言うけど宇髄さんだって鈍ちんだ。
昨日、男心を察することができなかったくせに今度は"女心を察しろ"なんて酷い話だと思うが、それでも女心的には女性に物を贈られるのはちょっと嫌なのだ。
「??何が嫌なんだよ。」
「…お、女の人に…贈り物…して欲しくないんだもん…。」
「……………は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔を向けられる私の居心地の悪さときたら…。
しかし宇髄さんは暫く目をパチクリさせながら訝しげに私を見つめていた。