第29章 停戦協定※
──そんな男もういらないからほの花にあげるわ
瑠璃さんの言葉に目を見開いたのは私だけではない筈。
仲直りさせてくれるためだけではなく…きっとこれは認めてくれたんだ。私のことを。
だからわざと此処までしてくれたんだ。
それが分かって、慌てて御礼を言ったが振り返ることもなく部屋に行ってしまった瑠璃さん。
彼女が部屋に入ったのを見届けると、隣にいた宇髄さんが私を抱き上げた。
「う、わぁっ…!」
突然の浮遊感に耐えきれず彼の首に掴まったが、そんな私を気にすることなく歩いて向かった先は宇髄さんの部屋。
畳の上にゆっくりと下ろされると今度は正面から抱き締められた。
優しく腰を抱き寄せられて、もう片方の手は頭を掻き抱いてくれている。
宇髄さんに密着すれば、先ほどまで不安だったことは溶けてなくなっていくようだった。
私の無神経な発言で彼を傷つけたと言うのに結局、瑠璃さんの前で謝らせてしまったことが申し訳なくて背中をトントンと叩いた。
「…天元…?さっきは…ごめんなさい。」
「……何でほの花が謝るんだよ。悪いのは俺だろ。」
「ううん。私が悪いよ。ごめんね…?無神経なこと言っちゃったね。気づけなくて…本当にごめんなさい。…嫌いに、ならないで…?」
「なるわけねぇだろ…!!」
漸く体を離してくれたかと思うと、熱い唇が降ってきて私のそれと重なる。宇髄さんとの口づけは甘くて大好き。
"嫌いにならない"と言葉で伝えてくれると、益々彼への想いが込み上げて、首に手を回した。
お互いの存在を確認し合うような優しい口づけは吸い寄せられるように啄むと脳に甘い痺れを来す。
蕩けてしまいそうになったところで、漸く離された唇に彼を見れば赤い紅が付いていて自分の化粧を思い出した。
手を伸ばして彼の唇を指で拭い取ると、その手を掴まれてもう片方の手が顔に添えられた。
見上げた彼の瞳が熱っぽく感じたのは私が既に蕩けていたからか、彼が熱情を感じていてくれたからなのかは分からない。
でも、恥ずかしくなるほど自分を見つめてくる宇髄さんに根を上げたのはやはり私で、目線を外すと下を向いて羞恥に耐えた。