第29章 停戦協定※
思った通り、天元は追いかけてきた。
チラッと見ただけでも隣にいたのがほの花だと分かったあたりは流石と言えよう。
でも、簡単に渡すわけにはいかない。
仲直りさせてあげると約束したのだ。
ほの花のことは好きではないが、もう…大嫌いでもなくなってきた。
毒を飲ませたのも、今までの非礼も、全部返すのには時間がかかることだ。
だとしても…、とりあえずのところは喧嘩の仲裁くらいはしてあげようと思った。二人へのお詫びのつもりで。
「…何でよ。折角、ほの花に綺麗に化粧してあげたの。少しくらいこれで外を歩いてもいいじゃない。」
「それが駄目だって言ってんだわ。頼むからやめろ。」
「勿体無いじゃない。この子は化粧しなくても可愛いけど、したら凄く色っぽくなっていいじゃない。宝の持ち腐れだわ。」
私の言葉にボンッと火がついたかのように真っ赤な顔をしたほの花は目を彷徨わせて下を向いてしまったが、天元は辛辣な顔をしたままだ。
「…知ってんだよ。そんなことは。俺だけが知ってりゃいいだろ。他の男に見せてやることはねぇ。返せ。俺の女だ。」
「ふーん…?別に他の男に見せびらかすためにしたわけじゃないけど?ただ着飾ってみたら良かったからこれで出歩きたかっただけよ。」
「だとしても…だ。ほの花を放せ。瑠璃。」
頑として放そうとしない天元に強い意志を感じる。もう一押しね。
私は掴んでいたほの花の手を放せば、不安そうに此方を見た彼女に少しだけ笑って見せた。
「…分かったわよ。でも、ちょっとは自重しなさいよ。この子の体ちゃんと見たの?」
ほの花の体には所有印だけでなく、強く押さえ付けられたことで天元の指の痕も残っていた。それはすぐに消えるだろうし、もう無くなってるかもしれないけど。
それでも、体の大きさも力の違いもあるのに無理矢理そんなことされたら傷つくのは女に決まってる。
自分の女だからって何をしても許されると思ってるわけではないと思うが、同じ女として許せない部分はきちんと叱責したかったのだ。
それが回り回ってほの花のためにもなると思ったから。