第29章 停戦協定※
「でも、ほの花様のことで不満があればいつでもおっしゃってくださいね。男同士、愚痴を聞きますので。」
「そりゃ…助かるな。だけど今度は酒飲みながら惚気でも聞かせてやるよ。」
「ハハッ。ご馳走様です。」
コイツらが此処にいて良かった。
人に話したことで気分の昂りも落ち着いたし、頭も冷えた。
今頃、ほの花はしくしく泣いてるかもしれない。自分が泣かせたくせに言うことではないが、アイツを泣かせたくはない。
泣き顔よりも笑った顔が好きだ。啼かせた顔は好きだが。
そろそろ謝りに行くか…と思い始めた時、突然襖が開け放たれた。
「ちょっとほの花と散歩に行ってくるわ。」
襖の向こう側に居たのは瑠璃だったが、ちらりと見えたのは…多分ほの花。
あまりに雰囲気が違ったから一瞬、誰かと思ったが間違いなくほの花だ。俺が見間違う筈ない。
しかし、それだけ言うためだけに襖を開けたのかピシャリと閉められたそれに全容は窺い知れなかった。
「…は?ちょ、っと待て…!」
慌てて立ち上がり、襖を乱暴に開けて玄関の方を見ればやはりほの花だ。背格好は間違いなく彼女。
でも、背中だけでも漂う色香にゴクリと生唾を飲むと小走りで玄関に向かうと、履物を履こうとする彼女を制止するが如く、腰を引き寄せた。
「…ちょっと待て…、瑠璃。どう言うことだ。」
上から見下ろせば、チラッと上を見たほの花と目が合ったが、あまりの色気に俺ですらちゃんと見ることができない。恐らく瑠璃の仕業だろうがこんなことは必要ないのだ。
こんな格好のほの花を連れて、散歩に行くなんて言語道断だ。
「散歩すんのにほの花のコレはなんだ?必要ねぇだろ。」
「あら、元が良いんだからこれくらいすべきよ。綺麗でしょ?我ながら良くできたわ。」
しかし、悪びれもせずにニヤッと笑った瑠璃は尚もほの花の手を離さないでいる。
「離してくれない?気分転換に女同士散歩に行くくらい良いでしょ?」
「それは…断る。お前が離せ。」
「嫌よ。天元が離しなさい。呑気に男同士でお茶してたんだからいいじゃない。」
これは…確実に俺を責めてる。
放っておいたのはお前だろと言ってる。確かにそうだ。
だけど…本能がこの手を離すなと言っている。だから絶対に離すものか。