第29章 停戦協定※
「どんな奴だよ、その鋼鐡塚って男は。」
こうなったら気になることはすべて聞いてやる。ほの花に想いを寄せる不届き者め。
アイツは俺の女だ。何人たりとも手を出すことは許さねぇ。
俺の質問に顔を見合わせると正宗がゆっくりと口を開いた。
「…刀鍛冶の里でも…変人と呼ばれるほど、刀に愛情を注いでいらっしゃる方でした。ほの花様にも傍若無人な態度でしたし、その…想いを寄せていたということを知ったのは最終日で、それまで本当に知りませんでした。」
「…まぁ、ほの花はその最終日ですら気付いちゃいねぇけどな。」
「…す、すみません…。」
…ということはその最終日に舞扇と共にあの愛の告白を言われたのだろう。
ほの花は気付いていないが、"フラれたら面倒見てやる"なんて求婚だ。
ひょっとしたらあの舞扇の装飾や根付は俺に嫉妬させてほの花と仲違いさせるためなのか?
だとしたらまんまとその男の作戦通りになりかけているではないか。
まぁ、俺がほの花をフることなどあり得ないが、ほの花があんなことをした俺を拒否することは十分にあり得るのだから。
「…あー…、俺、本当に何やってんだよ…。あまりに腹が立って無理矢理抱こうとしちまった…。つーか、酷いことした。やべぇ…。」
「大丈夫ですよ。ほの花様はそんなことで宇髄様のこと嫌いになりませんし。」
本人でもないのにあっけらかんとそう話す正宗に横に座って笑顔を向ける隆元と大進。
この三人はほの花の家族同然だ。
それなのに自分の元主人に酷いことをしてもこうやって味方をしてくれることに感謝しかない。
「…だとしてもよ、俺、二回目なんだわ。嫉妬で酷いことしたの。流石にアイツの両親に顔向け出来ねぇ…。」
「あー…いえ、ご両親よりも兄君たちのが怒り狂うでしょうね。でも、それはそんな事がなくても怒り狂っていたでしょうし、仕方ないですよ。男女の関係において当事者にしか分からないこともあります。」
「そう、気を落とさず」と呑気に茶を啜り出す正宗だが、こちとら傷つけた側だ。一生守り抜くと決めた相手を傷つけてしまったことは悔やんでも悔やみきれない。
時を戻せるならば、全力で自分をぶん殴りたい。