第29章 停戦協定※
「はい。終わり。」
「え、あ、ありがとう、ございます。か、鏡…。」
「いいのよ、見なくて。行くわよ。散歩。」
「え、えええー?!か、鏡見せてくださいよぉーーーー!!」
瑠璃さんになされるがままに化粧をされていたが、終われば見せてくれるかと思いきや手を引かれて散歩に行くと言う彼女。
どんな仕上がりなのか確認もできぬまま散歩に行くなんて流石に如何なものなのか。
瑠璃さんを信用していないわけではないが、似合わない化粧をされて周りの人に失笑されるかもしれない恐怖と闘いながら玄関に向かっている。
しかも、着物は瑠璃さんの物だから丈が足りなくて肩や胸元まで開け広げられていて、こんな着崩し方したこともなければ正しいのかも分からない。
真っ赤になっていることだけはわかるけど、ズンズンと前を歩く瑠璃さんは素知らぬ顔で居間の襖を開けると「ちょっとほの花と散歩に行ってくるわ。」と言い、すぐにその襖をピシャリと閉めた。
其処にいたのは紛れもなく宇髄さんで少しだけ目が合ったけど、すぐに閉められてしまったためそれは数秒のこと。
多分、正宗たちとお茶でも飲んでいたのかもしれない。
彼らの声もした。
「る、瑠璃さん…、どこに行くんですか?」
「いいから。とりあえず履物履いて?」
「…え、ええ…?」
しかし、瑠璃さんに促されて履き物を履こうと玄関に降り立とうとした時にガンッと言うけたたましい音がした。
思わず後ろを振り向くと穴が開いた襖が廊下に無惨に転がっていて、眉を顰めたと同時に腰を引き寄せられた。
「…ちょっと待て…、瑠璃。どう言うことだ。」
私の腰を引き寄せて自分の腕の中に収めてくれたのは宇髄さんでその手が壊物を扱うように優しかったのでそれだけで泣きそうになった。
「どう言うことって?暇だからその辺散歩しようと思ったの。ほの花が付いてきてくれるって言うから。」
「散歩すんのにほの花のコレはなんだ?必要ねぇだろ。」
「あら、元が良いんだからこれくらいすべきよ。綺麗でしょ?我ながら良くできたわ。」
二人の言い争い?を聴きながらも宇髄さんの胸で彼の心臓の音がドクンドクンといつもよりも大きく聴こえるのがとても心地よかった。