第29章 停戦協定※
やっと一本の線で繋がった。
ほの花が何故あのとき、自分の紅を買わなかったか。
自分への自信の無さ
自分自身に無頓着加減
しかし、それを引き起こす原因はほの花が自分を知らなすぎるということ。
息を呑むほど美しい容姿をしていると言うのに、背の高いと言うことで嫌な想いをしたことがあるようで、酷く自信がない。
スケコマシだ、淫女だなんて酷い物言いをしても取り合ってくれなかったのは天元のことを好きだからと言うのだけが理由ではない。
ほの花自身がどこかその罵詈雑言を自分ごととして捉えてなかったのだ。
男を取っ替え引っ替えしたこともなければ、容姿を盾に男を誑かしたこともない。自分にできるはずもないと思っていたのだろう。
だからあんなにも暖簾に腕押しのような感覚だったのだ。
そう気付いてしまうと、自分が言った悪口が最初から土俵の上にも乗っていなかったことに悔しくなった。
もう彼女を痛ぶるつもりはないが、どうせ天元はこの美しいほの花を自分だけが理解してれば良いと思ってるはず。
これ以上、美しく着飾られて困るのは自分だからだ。
より一層男が集るだろうし、そうなれば自分が大変だからだ。
「…あー、ちょっと首筋のこの痕は隠さないと駄目ね。ちょっと待ってて、化粧品持ってくるわ。」
「…お、お手数をかけます…。」
「そこは天元が悪いんだからあなたが謝る必要ないわ。」
首筋から胸元にかけては特に酷いそれ。
天元がこんなにも独占欲が強いだなんて知らなかった。
彼は四人許嫁がいても同じように平等に接してくれた。何処かの王室ではあるまいし、誰かが正室であとは側室ってわけじゃない。
全員が正室なのだから、平等に扱うのは当たり前だと思うが、天元は特に苦もなくそれをしてくれていた。
だけど、彼からしてもたった一人に決めてしまうと一点に愛が集中してそこしか目が行かない。
元々四人に平等に振られていた愛をほの花一人にぶつけられたらこうなるという事か。
出会ってしまったということ。
一人だけを愛し抜きたいと思う相手に。
それがほの花なのだ。
だからこれはお互いが乗り越えるべきことよ。
天元が隠したいほどのとっておきの宝物を私が磨いてお披露目してあげるわ。