第29章 停戦協定※
自信がないし、経験もないから、まさか自分に好意を向けられているなんていう予測がこれっぽっちも思い浮かばないのだ。
天元も不憫だとは思うが、そこにほの花の悪意はない。
環境のせいにしても、天元的には納得できない案件だとは思うけど、こうなってしまえばどちらも悪いわけではない。
ただ悪条件が重なってしまったのだ。
自分の知らないところで恋人に好意を抱いた相手が贈り物までしていた事実を知った天元がそれを見れば宣戦布告されたように感じたのだろう。
ほの花の話ぶりからすれば相手は天元と言う恋人がいることも知っていたのだ。
知っていても想いを止めることができなかったけど、この二人のことをどうこうしようとも思っていなかった筈だ。
そうでなければ"フラれたら面倒見てやる"とは言わない。
今すぐにでも奪いに行くと思う筈だ。
「その刀鍛冶があんたに気が合ったのは間違いないわ。いい?"フラれたら面倒見てやる"って言うのは天元と別れたら自分のところに来いってことなの。別れたら交際しようって言われてるの。だから天元は怒ったのよ。自分の恋人を知らないところで口説かれたから。」
「……え、……え、えええええ!?そ、そういうこと、ですか?え?ど、どうしよう…!気付かなかった…!え、、どうしよう!瑠璃さん、私、凄い無神経なこと言っちゃった!!」
漸くコトの重大さに気付いたようで顔面蒼白なほの花に深い息を吐く。
此処まで言わなければ分からない鈍チン女を好きになってしまったのは天元なのだから、半分は自業自得。
その刀鍛冶も恋人がいるのを知っていながら口説いたのは間違いないのだから想いに気付かれなくても自業自得。
そして、激鈍チンとはいえ無神経にもその贈り物を恋人に見せびらかして他の男から口説かれた事実をヘラヘラと言ったのであれば、全身にお仕置きを受けたのはほの花の自業自得だ。
「言っちゃったもんは仕方ないわよ。」
「ど、どうしよう…!嫌われちゃいますかね?や、やだぁーー!フラれたくないですーー!!」
あれほど私に罵詈雑言を言われても少しも怯まなかったと言うのに、目の前にいるのは弱々しく泣き崩れるただの女だ。
大切なのは天元に愛されている事実だけなのだ。