第6章 相反☩そうはん☩感情
「あ、主様………ッ?」
フェネスの頬がみるみる紅くあかく染め上がっていく。
その間もその掌はヴァリスを抱きしめたまま優しい手付きで背をさすっていて、
温かな掌が背を撫でる感触が妙に心地良かった。
「………っふふ、」
指を伸ばしてフェネスの頬に触れる。
「………ありがとう」
「! 主様」
「私なんかのことを肯定してくれて………。マリス以外では、あなた達が初めてよ」
心から微笑って見せると、フェネスはほっとしたようにその瞳を解く。
自分の頬に触れる指に、そっとみずからのそれを重ねあわせた。
「いえいえ。あなたの元気が出たのなら良かったです」
一瞬だけ重ねられた掌は優美な造形でありながら、
かさりと乾いていて、そしてあちこちに剣だこのできている。
(あなた達を完璧に信じることは、今はまだできないけれど………、)
だけど、それでも。………あなた達だけは、【あの女】と違うのかもしれないの。
口にできない期待を嚥下して微笑うと、彼も微笑みを返してくれる。
………今だけは、胸の痛みを忘れていられた。