第6章 相反☩そうはん☩感情
逃げることも、その温もりを受け入れることもできずにいた
ヴァリスを痛ましそうに見下ろして、フェネスが唇をひらく。
「あなたが自分を許せないなら、俺達が主様の代わりにあなたを肯定します」
その言葉に吐息を封じる。
彼の言葉が、自分を包み込む温もりが、
空虚に彩られたヴァリスの心にまるで魔法のように沁み込んでいく。
驚きのあまり止まった涙を優しい手付きで掬い上げ、そのおもてがぐっと近づいてくる。
「………っ」
思わずぎゅっと瞳を封じてしまうと、その唇がヴァリスの瞼にそっと押し当てられた。
「!」
恐る恐る瞼をひらくと、はにかむような微笑が瞳に映る。
自分のおもてがみるみる真っ赤になっていくさまを思考の裾で自覚する。
瞠目して涙の名残の滲む瞳でフェネスを見上げると、
彼も仄かに頬を染めてヴァリスを見つめていた。
「これで、泣き止んでくれましたね」
ほっとしたように瞳を解いて微笑いかける。
涙の軌跡を辿るように頬に触れていた指が、名残惜しそうに離れていく。
(こんな風に寄り添ってくれたのは、あなた達が初めてだね)
………マリスを除けば。そう思考に載せた刹那、また視界が滲んだ。
「あ、主様?」
ぽろぽろと雫を伝わせる瞳に気づいたフェネスがにわかに動揺しはじめる。
ぎこちない所作で溢れ続ける雫を拭い、
再度ヴァリスを抱き寄せてその背を撫でてくる。
おろおろとするさまがつい先刻の彼の様子とはあまりにかけ離れていて、
ヴァリスは頬に涙を伝わせたまま微笑んだ。
そのまま鈴を転がすような声音でくすくすと微笑いはじめる。