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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第4章 繋がり





「先生?」

五条がひょこっと顔を出す。


「午前の練習、そろそろ終わりにしようかなって思って来たんだけど、」

五条の視線が香久夜へ向く。

一瞬。

笑顔が止まった。

「……あれ?」
「どうしたんですか?」

恵が尋ねる。

「いや」

五条は目を細めた。

「ちょっと待ってね」

そう言って、五条は目元に巻いていた包帯へ手をかける。

「先生?」

するり。
包帯が解かれる。

現れた青い瞳に、恵が僅かに目を見開いた。



「…久しぶりに、見ます、六眼。」
「そう?」


隣では東堂も目を丸くしている。


「それが……お前の目か」
「そうそう」


五条は軽く笑いながら、香久夜の前にしゃがみ込んだ。



…先生の、目。



香久夜は息を呑んだ。

「……」


言葉が出なかった。

そこにあったのは、今まで見ていた五条先生の瞳とはまるで違うものだった。

青。

ただ青いのではない。
どこまでも透明で、深くて。

空をそのまま閉じ込めたようなのに、同時に夜の海のようでもあった。

光を受けているわけでもないのに、瞳そのものが淡く輝いている。

その美しさに、香久夜は動けなくなる。

――綺麗。

そう思った瞬間。
その「綺麗」という言葉では足りない気がした。

人の目を見ているはずなのに。

自分が見ているものの方が、自分を見透かしているような。

身体の奥まで覗かれているような、不思議な感覚。


「……」

気づけば、香久夜は瞬きすら忘れていた。
胸の奥が、きゅうと締めつけられる。
懐かしい。

前に一度、覗いたことがあったのに、初めで見つめられるその目に、香久夜は心を奪われていた。


遠い昔、夜の底で一度だけ見上げた空。
月の光を受けた水面。


誰にも見つけてもらえなかった長い孤独の中で、ただ一つ、自分を見つけてくれるもの。


そんな記憶とも呼べない感覚が、香久夜の中で淡く揺れた。

「……あれ」




頬を、涙が伝った。

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