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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第4章 繋がり


道場へ続く廊下を、東堂を先頭に三人で歩いていた。

「体術を教えると言ったが、まずは技ではない!」

東堂が振り返る。

「……技じゃないの?」

香久夜が首を傾げた。

「基本だ!」
「基本……」
「そうだ。構え、足運び、そして――呼吸!」
「呼吸?」
「そう!」

東堂は道場へ入るなり、どん、と自分の腹を叩いた。

「強者は呼吸から違う!」
「……」

香久夜が無言で恵を見る。

「聞いとけ」
「…うん」

三人が道場の中央へ並ぶ。
東堂は香久夜の正面に立つと、少しだけ姿勢を正した。

「まず、肩の力を抜け」

香久夜が肩を落とす。

「次に、背筋は伸ばす。しかし、胸を張りすぎるな」
「こう?」
「そうだ」

東堂は香久夜の肩に手を添え、力の入り方を確かめるように姿勢を直した。

その瞬間、香久夜の鼻先を、爽やかで清潔な香りがふわりとくすぐった。

「……?」

近い。

東堂から、すごくいい匂いがする。

汗をかいているはずなのに、嫌な匂いはまったくなくて、乾いた木や石鹸のような、落ち着く香りだった。

「東堂くん、いい匂いする」
「何?」

東堂が眉を上げる。

「すごくいい匂い」
「そうか!」

東堂は満足そうに胸を張った。

「強者たるもの、身だしなみもまた強者の条件だ!」
「そういうものなの?」
「そういうものだ!」


少し離れたところで、恵の眉がわずかに寄った。

東堂は気にせず、香久夜の肩から手を離すと、自分の腹へ手を置いた。


「そしてここだ」
「おへそ?」
「そこから指四本分ほど下」

香久夜が自分の腹へ手を当てる。

「ここ?」
「そこが丹田だ」

「たんでん……」
「ここに力を集める」


東堂は香久夜の手の位置を確認するように、彼女の手首へそっと触れた。

「もう少し下だ」
「ここ?」

「そうだ」

また、東堂の香りが近くなる。
香久夜は思わず小さく息を吸った。

やっぱり、いい匂いがする。

「……本当にいい匂い」
「まだ言うか!」
「だって、いい匂いだから」
「ふむ。よほど気に入ったようだな!」

「うん」
「東堂先輩、話を進めてください」

恵の声が低くなる。

「何だ、伏黒!」
「呼吸の話をするんだろ」

「その通りだ!」

東堂は香久夜から少し離れた。


「呼吸だ」

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