第4章 繋がり
「……そうだ」
『は森に、川に、草に愛されてるから、
自然の中なら、誰よりもうまく動けるよ』
…昔、お兄ちゃんに言われたんだ。
香久夜が呟く。
加茂が距離を詰める。
「行きます」
「……!」
香久夜は、今度は逃げなかった。
横へ走る。
木の間を抜ける。
加茂の攻撃が木の幹に当たった。
「!」
「!」
五条の声。
「いいよ! そのまま!」
香久夜が走る。
足元の傾斜。
一瞬だけ身体を沈める。
加茂が追ってくる。が、
「ッ!」
一瞬落ち葉に足を取られた。
「そこ!」
五条が叫ぶ。
「右の岩!」
香久夜が岩へ向かって走った。
加茂の視界から、一瞬だけ姿が消える。
「……!」
香久夜は岩の裏から回り込んだ。
「今!」
五条の声。
香久夜が飛び出す。
「――っ!」
加茂が振り返る。
間に合わない。
香久夜の拳が、加茂の肩へ触れた。
「……!」
「そこまで!」
五条の声が響いた。
静寂。
香久夜は、自分の拳を見つめる。
「……ごめん、痛かったよね」
「………は?」
戦闘後に謝った香久夜にフリーズしたように加茂は言葉を漏らした。
五条が笑った。
「一発取ったね」
香久夜の顔が、ぱっと明るくなる。
「私、勝った?」
「うん、ちゃんと戦えてた」
五条は香久夜のところまで歩いていく。
「相手の術式で叶わないなら、地面も、木も、距離も、使えるのは全部使う」
「……」
「ハルは山で暮らしてたんだから、その辺は僕より得意でしょ?」
香久夜が目を瞬く。
「……山」
もう一度、思い出す。
“すぐるくん”の笑顔。
胸の奥が、少しだけ温かくなる。
「……昔、教えてもらったことあります。」
「誰に?」
五条の声が、一瞬だけ低くなる。
「…すごく、大切な人。」