第4章 繋がり
「しかし……あんな呪霊を太らせるだけの餌を、よう飼おうなんてお決めになりましたなぁ」
隠そうともしない蔑みの籠った京都弁。男は鼻で笑うように言葉を続ける。
「……あなたと私じゃあ、随分と認識に違いがあるようで」
「こっちじゃあ『歩く天災』やら『生きる特級呪物』なんて言われておりますのを、ご存じでおいでやすか?」
「…………」
「まあ、呪力の制御は人並みにできてはるようで安心いたしましたわ。うちで預かる大事な子らを呪われでもしたら、たまったもんじゃございませんからなぁ」
粘つきつくような言葉をさらりと流しながら、僕は無言で圧をかける。
だが、男は一拍置くと、探るような鋭い目を僕へ向けてきた。
「……ところで五条悟殿。あの呪力操作の訓練は、いつからさせとるんです?」
「さあ。」
「はぁ、短期間でようここまで仕込みはった。あんた、ほんま腕がよろしいなぁ」
男は感心したフリをしながら、本命の「情報」へとぬるりと足を踏み入れてくる。香久夜の価値と、その取り扱い方を探り当てるために。
「……他に何の訓練をさせてはるんです? 例えば……そう、噂に聞くかぐや姫の能力、呪力の『受け渡し』やら何やら……なにか特別な儀式でもおありで?」
両面宿儺を太らせたとされるかぐや姫の能力はその無限の呪力の受け渡しだと、言われていた。
実際の記録も、史実ももちろんない。
ただ、宿儺の台頭とかぐや姫との駆け落ちが偶然重なっただけかも、しれない。
だが、眉唾物の噂話だった存在が目の前に現れては、それを信じる輩も多くいる。
…実際、呪力の受け渡しは、何らかの方法によって可能ではありそうだ。
(でも、お前らに教えるわけねぇだろうが。)
僕は目隠しの下で青い六眼を冷たく細め、張り付いた笑顔のまま、一切の隙を見せずに男を見下ろした。