第4章 繋がり
「……っ!?」
静かに涙を流す香久夜を見て、周りの面々が一斉にパニックに陥った。
「お、おい伏黒! お前、女の子泣かせてんじゃねえよ! 何したんだよ!?」
「え、ええぇ!? 伏黒くん、ダメだよ泣かせちゃ! ほら、ハンカチ……っ!」
ほうきから降りた西宮が叫び、三輪がオドオドとポケットを探りながら手を彷徨わせる。東堂すらも「む……これは……」と腕を組んで困惑の表情を浮かべた。
「違っ……俺は、何も……っ!」
周囲からの非難の視線と、何より自分を想って静かに涙をこぼす香久夜の姿に、恵の頭は真っ白になった。
嫌いになったわけじゃない。むしろ逆だ。
今朝熟睡する香久夜へ欲望を向けてしまった自分への猛烈な罪悪感と自責の念で、直視できなかっただけなのだ。
自分のあまりにも情けない不器用さが、どれほど香久夜を傷つけていたかに気づき、恵の胸が激しく痛んだ。
恵は頭を抱えそうになるのを必死で耐え、香久夜の前に深く屈み込んだ。
自分の指先で、彼女の頬を伝う冷たい涙をそっと、優しく拭い去る。
「……」
「……ん……っ」
「泣くな……ほんとには何も悪くないから」
「……ほんとう……?」
香久夜が涙で潤んだ瞳で見つめ返す。
こんな時なのに、あまりのいじらしさに、奥歯を固く噛み締めた。
「……ああ。お前のせいじゃない。俺が……勝手に一人でうだうだして、冷たくしてただけだ。……ごめん」
まっすぐに届いた恵の謝罪と、頬に残る指の温もり。
香久夜はほっと胸を撫で下ろし、涙を浮かべた瞳のまま、そっと恵の袖口をキュッと握り直した。
「……よかった。嫌われたんじゃ、ないんだね」
「……当たり前だろ、バカ。…すまなかった」
降参するように小さく頷いた恵を見て、香久夜はパッと花が咲いたような笑顔を咲かせた。
そのやり取りを一部始終見ていた西宮が、ほうきの上でガシガシと頭を掻きながら、完全に毒気を抜かれた声で突っ込んだ。
「……仲直りって、子供か!」
気まずい空気も、周りの困惑も、すべてその無垢さで甘く溶かしてしまった香久夜。二人の間に再び戻った穏やかな熱を前に、京都校の面々はもう何も言えず、ただ苦笑いを浮かべるしかなかった。