第4章 繋がり
「ところで」
境内へ一歩踏み出した瞬間、巨躯の男、東堂葵は香久夜の目の前に立ちはだかった。
「お前、好きな男はいるか?」
「…………」
突然の質問に、香久夜はぽかんと顔を上げた。
好きな人。その言葉を聞いた瞬間、朝から一度も目を合わせてくれず、ずっと自分を遠ざけている恵の横顔が脳裏を掠めた。
(私……恵くんに、何か嫌なことしちゃったのかな……)
朝からのそっけない態度、話しかけても返ってくる冷たい言葉。ヨクバから連れ出してくれた、優しかった恵が、急に遠くへ行ってしまったような寂しさが、静かに胸の奥を押し潰していく。
香久夜はすっと自分の服の裾を掴んで消えるような声で言った。
「……恵くん」
「……え」
恵が弾かれたように肩を跳ねさせる。香久夜はおそるおそる恵を見上げ、自分でも抑えきれないくらい小さな、今にも消えそうな声で呟いた。
「私……何か、嫌なことしちゃったなら……ごめんなさい」
「は……?」
「……朝から、目も合わせてくれないから……。嫌いになられたのかなって……」
喋っているうちに、押し殺していた悲しみがどんどん膨らんでいく。
「頼れ」と言ってくれた時の温もりや、朝の冷たさが混ざり合い、視界がじんわりと熱いもので滲み始めていく。
「私……恵くんのこと、好きだから……仲直り、したいです…」
言葉の終わりに、大きな瞳からポロリとひとしずく、綺麗な涙が零れ落ちた。香久夜は声も上げず、ただ泣かないようにと必死に唇を噛み締めながら、ぽろぽろと涙を流し続けた。