第4章 繋がり
車がゆっくりと停まった。
「着いたよー」
五条がシートベルトを外す音に合わせ、香久夜も窓の外を覗き込んだ。
「ここが、京都校……?」
「そう」
車を降りると、山奥の澄んだ静けさとは異なる、古い年月が重なった独特の重たい空気に肌が包まれた。
「……大きい」
「高専なんてどこも似たようなもんだよ」
「東京より大きく見えます」
「気のせいじゃない?」
「先生、東京校の方が広いって前言ってた」
「……君ってそういうところだけ覚えてるよね」
五条が笑う横で、恵は笑わずに周囲へ鋭い視線を配っていた。
「……先生」
「ん?」
「人が多い」
「そりゃ交流会だからね」
「そうじゃなくて」
恵の視線の先。校舎の影から、見知らぬ術師たちがこちらを盗み見ている。
山育ちで人の悪意や品定めに疎い香久夜にも、刺すような異様な視線が自分に向けられていることだけは痛いほど伝わった。
「……っ」
恐怖で足がすくみ、香久夜は無意識に恵の服の裾をキュッと掴んだ。
「気にするな」
朝までのぎこちなさが嘘のように、恵の声がすぐに届く。
「でも……」
「大丈夫だ」
見上げると、恵は何でもない顔で自分を庇うように立っていた。
「俺がいる」
「……うん」
香久夜は小さく笑った。
朝、急に目も合わせてくれなくなった理由も、複雑な男心も、世間知らずな彼女には分からない。けれど「俺がいる」という言葉に、冷えていた胸の奥がふっと温かくなり、理由のない安心感が広がっていく。
朝のモヤモヤは消え、ただ恵が隣にいてくれることへの愛おしさと、胸をくすぐる温かな動悸だけが残った。
その瞬間——。
「おーい! 東京校!」
大きな声が響き渡った。