第4章 繋がり
「先生、勝手に連れ回さないでください。それに……先生がいると観光じゃなくなる」
「え、ひどくない? 僕だって香久夜ちゃんと京都観光したいし。それに、香久夜ちゃんには僕の半径3キロ圏内くらいにはいてほしーなー」
五条のおどけた言い方に、恵は何かを察して眉根を寄せた。
「そういえば……天の羽衣は高専に置いてきましたけど、大丈夫なんですか」
その言葉に、香久夜は無意識に自分の胸元へ触れた。今までずっと身につけていたお守りのペンダントは、五条の指示で東京に留めてきたのだ。
「、家を出てからずっと“循環”、頑張ってるよね?」
「……はい」
自分の莫大な呪力を体内で留め、滑らかに巡らせる行為。昨日の練習からずっと続けており、まだ完璧ではないものの、少しずつ体内に落ち着いて廻せるようになりつつあった。
「偉い偉い。自身にも呪力を漏らさないように頑張ってもらってるけど、完全じゃないからね。周りの非術師に影響しないよう、僕の術式で結界みたいに包んであげてるんだ。だから、僕の見える範囲にいてほしいかな。ここ、京都だし」
「……たしかに、京都、ですもんね」
恵の妙に含みのある言い方に、香久夜は首を傾げた。
「京都って、何かあるんですか……?」
「……」
恵が黙り込む。助手席の五条も前を向いたまま、薄い口元をすっと歪めた。
「いろいろね。歴史とか、お寺とか……東京とは考え方が違う術師もいる」
「考え方が違う……?」
「だから、あまり一人で動くな。俺たちの近くにいろ」
恵が諭すように言うと、香久夜は深く頷いた。
「うん。恵くんの近くにいればいいんなら、大丈夫」
あまりにも疑いなく自分を信頼しきった言葉に、恵は喉を詰まらせ、拍子抜けしたように目を丸くした。
香久夜はそのまま、また無邪気に車窓の外へ顔を向けていく。自分を取り巻く暗雲も、狙われている危険も知らず、ただ無防備に笑う横顔。……あんなことをした俺に、信じ切った笑顔を見せる。
すこし、居心地が悪くなって、恵はまた反対方向の窓から景色を眺めた。