第4章 繋がり
プシューッと重い排気音を立てて新幹線が止まり、ドアが開く。洗練された冷気とともに古都独特の湿り気を帯びた風が吹き抜けた。
ホームに踏み出した香久夜は、胸いっぱいに息を吸い込む。
「……京都だ」
手に持った小さな鞄をぎゅっと抱え直し、香久夜がきょろきょろと周囲を見回す。乗降客の行き交う雑踏、遠くに見える京都タワーのシルエット。そのすべてが新しく、どこか眩しい。
「そんなに変わらないだろ」
すっと横に立った恵が、ぶっきらぼうな声を投げかける。だが、その視線は香久夜の瞳を掠めることすら拒むように、あらぬ方向へ向けられていた。
香久夜の純粋な眼差しが今の恵には眩しすぎて、直視することができない。
「でも、京都だよ」
「だから?」
「京都って感じがする」
「どういう感じだよ」
「……分からない」
「分からないのかよ」
ふふっと嬉しそうに笑う香久夜に、恵も思わず小さく息を吐いた。頼りにしてほしい。守ってやりたい。そう思っていたはずなのに、避けるような言葉の端々に、不器用な葛藤が滲み出ていた。
「いやぁ、若いっていいねぇ」
二人の少し後ろから、ガラガラとキャリーケースを引きながら五条が追いついてくる。目隠しの下で、ギクシャクした二人の空気感を面白がるような笑みを浮かべていた。
恵が露骨に嫌そうな顔をして、不機嫌そうに横を向く。
「ほらほら、恵くんと先生、喧嘩しないの」
香久夜が二人の間に割って入るようにして言葉を挟んだ。
「してねぇ」
「僕たち、仲良しだよね?」
「……」
五条の軽い調子に、恵はうっとうしそうに黙り込む。
「ほら、いきましょ」
次の瞬間、香久夜がえいっと意を決したように手を伸ばし、恵と五条の腕をそれぞれ自分の細い腕でぎゅっと抱え込んだ。
「っ……!?」
右腕に伝わる、香久夜の柔らかく温かな体温。
恵の全身の血が、一瞬で頭へと逆流した。ビクッと身体を強張らせ、弾かれたように香久夜を見下ろす。今朝からあれほど避けていた距離が、香久夜の無邪気な行動で一気にゼロになったのだ。
(おい……何やってんだ、お前は……!)
今朝の記憶が鮮明に蘇り、恵の耳たぶは火がついたように赤く染まった。腕を振り払いたいのに、嬉しそうに自分を見上げる香久夜の表情を見たら、どうしても突き放すことができなかった。