第3章 香久夜の過去
枕を抱えて恵の部屋に入ると、ベッドは一つ。
予想していたはずなのに、目にした瞬間、胸がぎゅっと小さく鳴った。
「……そこ、端でいいから」
彼が何でもないように言ったので、私は頷いて布団に潜り込む。
ベッドの端っこに小さく丸まって、できるだけ距離を取る。
恵くんが布団の中に入ってきて、キシっとベッドが軋んだ。
「おやすみ。」
「お、おやすみ!」
寝つきがいいのか、その言葉が聞こえてすぐに寝息が聞こえてくる。
…恵くん、意識とか、しないのかな。
少し横を覗くと、綺麗に瞳を閉じた恵くんが見えた。
……距離を取っているはずなのに。
隣にいることが、ものすごく近く感じてしまう。
五条先生と一緒にいた時は、不思議と守られてるようで安心して眠れた。
でも今は――違う。
…ね、寝れないかも。
ーー
ー
何分そうしていたかもわからない頃。
隣から聞こえる恵の寝返りの音、布団が擦れる気配、同じ呼吸のリズム。
眠れそうにないと思ったけど、じんわりした緊張の熱に体が疲れていたのか、まぶたがだんだんと重くなっていった。
(……でも、なんか……安心……じゃなくて……ドキドキ……)
小さく息をついて、私はぎゅっと目を閉じた。