第3章 香久夜の過去
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…昨日は五条先生が隣で寝てくれたけど、
今日はどうしよう。
夕食と入浴を終えて、リビングのソファに腰掛けたまま、私はぼんやりと考え込んでいた。
隣には、風呂上がりの恵くん。
同じシャンプーを使ったせいか、リビングに漂う香りは、私と彼の匂いが溶け合ったように感じられる。
…先生、今夜は帰ってこないのかな。
チキン南蛮、美味しくできたのに…。
あの人の腕の中にいると、不思議とすぐ眠れた。
怖い呪霊の気配も、嫌な夢も、全部遠ざかっていくようで。
でも――。
一人になると、やっぱり嫌な映像が浮かんでくる。
浴室の静けさでさえ、あの夜を思い出させて。
ベッドで一人なんて、まだ無理かもしれない。
どうしよう。
考えがまとまらないまま視線を落としていると、隣で恵が立ち上がった。
「……そろそろ寝るか」
低い声が落ちて、私は反射的に顔を上げる。
「あ、うん」
私も立ち上がり、五条先生にもらった自分の部屋に向かおうとした――その時。
「おい」
短く呼び止められた。
「一人で寝るな。俺のベットで寝ろ」
「……えっ」
胸が一気に跳ね上がる。
思わず振り返ると、恵は真剣な目をして私を見ていた。
「前みたいに、また一人で抜け出されたら困る。……だから、俺の部屋で寝ろ」
……ずるい。
そんな顔で言われたら、断れない。
「…うん」
掠れた声でそう答えると、恵はほんの少しだけ表情を緩め、無言で招き入れるように自身の部屋のドアを開けた。
その仕草になんだかドキッとして、その感情を悟られないように、必死に言葉を紡いだ。
「ま、枕持ってくる」
返事の代わりにそう言って、私は自分の部屋に入った。
…私、顔、熱いかも。