第3章 香久夜の過去
——カタン。
どこかで何かが軋むような音がして、ぱち、と目が覚めた。
見慣れない天井。
布団の感触も、空気の匂いも、いつもと違う。
(……ここ、どこ……)
身体を起こしかけて、ふと思い出す。
——五条先生の家。
夕食を食べて、眠くなって、気づいたら……ベッドの中だった。
(ああ……そっか)
眠気まなこでした会話を思い出す。
(眠れない……)
もう一度眠ろうも目を閉じてみるけど、瞼の裏に浮かぶのは、あのときの光景ばかり。繰り返された母の死、呪霊の気配、そして自分の中から溢れ出たもの。
(こわい……やだ、こんなこと考えたくない)
両手で頭をぎゅっと抱える。
考えたくないのに、考えてしまう。
一人だと、ろくなことを思いつかない。
嫌なことが、怖いことが、次々に浮かんでくる。
こんな感情、抱かないって決めたのに。
(……ダメだ)
こんなふうに思うのは、先生が嫌う。
伏黒くんも、きっと悲しむ。
でも、寂しい。怖い。
こんな静かな夜の中で、一人でなんていれない。