第3章 香久夜の過去
さらに、肩から大きく落ちかけたTシャツの生地を指先でじわじわと引き上げながら、露わになった首筋から鎖骨の窪みにかけて、すーっと指の腹でなぞり落としていく。
「…っ、はっ、んんっ」
冷たい空気と、五条の熱い指先。
そのコントラストに、香久夜の皮膚が小さく跳ねた。
「先生さ、これでも一応男なんだけどなー。
こんなに無警戒で、いい声で鳴かれちゃったら、いじめたくなっちゃうよ」
「んんっ、いじめないでください……っ」
顔を真っ赤にして、五条の服の胸元をギュッと掴んで縮こまる香久夜。
その必死で可愛らしい反応に、五条は満足したように「はいはい」と目を細め、ようやく香久夜の身体をふわりと解放した。
「ふふ、ごめんごめん。あまりに顔が赤くなるから、ついね。
……でも、他の男の前でその格好しちゃダメだよ? 恵あたりが見たら、固まって動かなくなっちゃうからさ」
「め、恵くん……?」
「そう。……あ、そうだ。せっかく落ちついたし、お腹空かない? 何か作ってよ」
「えっ……ご飯、ですか?」
「そう。僕、甘い物以外の飯は適当だからさ。キッチンの食材、自由に使っていいよ。家での『普通』を取り戻すのも大事でしょ」
そう言って五条は、ひらひらと手を振ってソファに腰を下ろした。