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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第3章 香久夜の過去




「五条先生……?」

職員棟の襖を開くとそこには誰もいなかった。
五条先生、高専にいないのかな。


(他に相談できる人、真希さんは…)


香久夜が諦めて踵を返そうとした時

「あれ、、どうしたの? 誰かに用?」
「五条先生、」


振り返ると、そこにはヒラヒラと手を振る五条の姿。


「どこか行かれてたんですか?」
「うん、ちょっとね。」

はぐらかすように軽い方であってもが、微細な異変を逃さない。


「顔色がよくないね。怖い夢でも見た?」


その言葉に香久夜は目を丸くしてしまう。


「……いや、えっと、」

いきなりのことで言葉がうまく出ない。
それでも五条は少し覗き込むようにしながら
香久夜が言葉を紡ぐのを待つ。



「その、お、お風呂が、怖くて……」


彼女の声は小さく、消え入りそうだった。
でも、言葉を選びながら、懸命に打ち明けているのがわかる。

五条はふっと息をついた。

「…そっか。そりゃそうだよね。あんな目に遭った後だもん、当然だよ。」


その“当たり前だ”という一言に、香久夜の肩がふっと緩む。
否定されない、責められない――それだけで、心がほどけていく。


「……誰か、見ててくれたら、平気だと思うんです。ちょっとだけでいいから、誰かが近くにいれば……」

「そうだねぇ…でも、マキは今日禪院家に戻ってるし、を任せられる子も2.3年にはいないんだよな…」



五条は腕を組んで、ほんの数秒、静かに考え込んだ。


「……じゃあ、うち使いなよ。」
「えっ……?」
「僕のとこの風呂。結界もあるしなんせ僕がいる。1番安全だよ。もちろん、僕は覗いたりしないしさ。」


そう言いながら、笑って目隠しを指でつまむ彼。
香久夜はきょとんとしながらも、頷いた。

「……いいの?」
「もちろん。」

軽やかな声とは裏腹に、五条の声にはどこか“決意”のようなものを感じた。彼女をひとりにしない、という確かな意思が。



「僕ももう上がるから、一緒に行こうか。」



そう言って、五条は職員棟の電気を消しに戻った。

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