第3章 香久夜の過去
「やっぱり、もう目が覚めたから、食堂行かない、ですか?」
「…なんで敬語?」
「なんか、なんとなく」
「…変なやつ。」
あんなことがあってから、どのように接したらいいかわからなくなってしまった。食堂に入るとちょうどお昼時だったようで、狗巻やパンダ、五条たちがすでに集まっていた。
「おっ、お目覚めの姫君。無事でなにより~!」
「しゃけ!」
「ゆっくり食べなよ~」
みんなの明るい声が心に沁みる。こんなふうに囲まれて笑う時間なんて、昔の自分からは想像もつかない。
「ありがとう…ございます。」
ふんわりと微笑む香久夜に、狗巻がマヨネーズをそっと差し出す。
「あ、ありがとう…えっと、これは…?」
「しゃけ(元気つくよ)」
隣の席ではパンダが「おかゆにマヨは合わないだろ!」と突っ込みつつ、彼女の椅子に背もたれ用のクッションを用意してくれていた。
それを見て、伏黒の眉が微かに動く。
席は彼女の隣、常に彼女を視界に入れられる位置をキープしていた。
「恵も昨日一級相当の呪霊と戦ったんだって?」
「…」
「恵?」
「あ、はい、そうっすね。五条先生のサポートありですけど」
「でもすげーよ。やるな」
輪の中心にいる香久夜を眺めながら、伏黒は上の空で会話をした。
だが、パンダが香久夜の器に卵焼きを分けてやった瞬間、カチン、と伏黒の茶碗が鳴った。
「……食べすぎるなよ。まだ本調子じゃないんだから。」
唐突なその言葉に、みんながちらりと伏黒を見る。
五条がニヤリと笑って、「お、出たね〜過保護ムーブ」と軽く突っ込むと、伏黒は少し耳を赤くして目を逸らした。
「うるさいです。」
彼の視線は、黙ってお粥をすくう香久夜の方に向く。
「恵くん、ありがと」
その言葉にパンダが反応する。
「え、いつからめぐみ呼びになったんだよ〜香久夜」
「あ、そういえば、いつからだっけ…?」
「じゃあ恵も香久夜じゃなくて呼び?」
「しないですよ、別に。」
「えーじゃあ俺がに変えちゃおっかな〜」
いーい?とパンダが聞いたのに、香久夜はニコッと笑った。
「…ッ!」
「なんだよ恵」
「………別に」