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呪術回戦ー八月の忌み子ー

第9章 かぐや姫の物語



額に走ったあまりの痛みに恵は顔をしかめ、五条が攻撃した場所を押さえながら思わず五条を睨みつける。


「……痛…っ! なにするんですか…」
「まったく、未成年がなーにしてくれちゃってんの! 僕がちょっと目を離した隙にさぁ。反省しなさい、反省!」


五条は痛がる恵をあっけらかんと見下ろすと、わざとらしく大袈裟にため息をついて見せた。
その軽薄な振る舞いで恵の心に渦巻いていた絶望的な思考を半ば無理やりに叩き割ろうとしたのが、七海にはわかった。


いつも軽薄で最強すぎるが故に孤独な五条悟は、人の心がわからないように見えて、教育者としては実に芯が通っていることを、七海はわかっていた。


「はね、呪力の解釈が進んで、ちょっと疲れちゃっただけだから。急な変化に心が追いついてないんだよ」


五条はくるりと踵を返し、ソファで力なく座る香久夜の頭を撫でた。その言葉は、冷たく引きこもってしまった香久夜へのフォローであり、同時に傷ついた恵の心を救うための言葉でもあった。



今朝の笑顔が嘘だったわけではない。ただ、彼女自身が自分の暴走する力に怯え、疲弊しているのだと。



「まぁ、結果オーライかな。君たちが深くまで交わったおかげでさ、の能力がまた少しレベルアップしたんだよ。呪力の『循環』の次は、なんと物理的な身体接触なしでの『呪力流し』。」


確かに、任務中、恵の中の呪力量が減るどころか一定を保ち続けた時間があった。あれだけ無駄に式神を出させたのにも関わらず。



七海は五条の言葉に静かに耳を傾ける。


「…二人が交わっても無事だったのは、昨日が新月だったからに過ぎないから、結構危ない端ではあったけど…一気に段階が進んだね」


「少し、急ぎ過ぎにも見えますが。」


「…確かに。呪力の循環の次は遠隔での呪力供与。は着実に力をつけてる。…だから

ーー恵には、強くなってもらわないと、困るんだよ」



五条はそう言って、恵の目線に腰を下り、無造作に恵の頭を撫でた。久しぶりの子供扱いに、恵は居心地悪そうに、その手を振りのけた。


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