第9章 かぐや姫の物語
「平気、ですか」
七海は小さく息を吐き、静かな歩調で恵へと近づいた。
「伏黒くん。私は大人であり、あなた方の保護者としてここにいます。ですから、あえて厳しいことを言います」
恵の目の前で立ち止まり、眼鏡の奥の鋭い光で彼を射抜く。
「あなたが背負おうとしているものは、一人の少年が抱えるにはあまりにも重く、そして毒になり得るものです。
…彼女の呪力が、あなたを侵食している。違いますか」
「……っ」
恵の息が詰まる。七海にはすべて見抜かれているのだと悟り、唇を噛みしめた。
実際、呪力量は底上げされ、いつもより力が出る感じがした。でも、そのあまりにも多い量に扱い方がわからず、コントロールがうまくいかなくなってる焦りを、任務のときに感じていた。
前回はただただ訓練で暴れればよかったけれど、これじゃあ実戦じゃ使えない。
「もっと、練習します。」
「努力でどうにかしようとする姿勢は評価しますが、」
七海は雨の落ちる空を見上げ、低く呟いた。
「……伏黒くん。あなたが彼女を想う気持ちも、守りたいという強い意志も否定はしません。
ですが、己の器を超えた力を受け入れ続けることは、誠実さではなくただの自傷行為です。あなたが壊れれば、彼女は一生その罪を背負うことになる」
その言葉に、恵の眉間がゆれた。