第9章 かぐや姫の物語
乱入者に驚き立ち上がったかぐやだったが、目の前に立つ男の異様な気配に息をのんだ。周囲の男たちが放つ卑屈な欲望とは根底から異なる、圧倒的な力と理不尽なまでの存在感。
だが、持ち前の勝気さは殺さなかった。かぐやは眉をひそめ、冷たく言い放った。
「無礼者。私に逢いたくば、他の愚か者と同じく私が課す難題を果たしてご覧なさい。……仏の御石の鉢でも連れてこられたら、考えてやろうではないか。」
都の貴族たちを破滅させてきた常套句。
だが、宿儺はその言葉を聞いて、腹を抱えて大笑いした。
「ハッ! くだらん戯言を」
宿儺はかぐやの言葉など意にも介さず、ズカズカと縁側から庭へ降り、池のほとりに転がっていた、なんの変哲もないただの小石をひとつ拾い上げた。
そして一歩で間合いを詰めると、逃げようとするかぐやの華奢な腕を強引に掴み寄せた。
「な、何をおし……っ!」
逆らおうとするかぐやの帯を容赦なく引き解き、着物の袖を捲り上げる。そこに露わになったのは、義母の嫉妬によって付けられた、痛々しい紫色の痣と生の擦り傷だった。