第9章 かぐや姫の物語
一千年前、平安の都。
のちに歴史の闇へと葬られるその女は、突如として都の端に姿を現した。
出自も定かではないまま、息をのむほどの美貌と奇妙な気品ひとつで貴族の養女となり、瞬く間に都中の話題を浚ったその女を人々は「かぐや姫」と呼んだ。彼女のもとには、夜ごと名だたる公卿や男たちが群がり、甘い言葉と財宝を積み上げて求婚した。
男たちは彼女のひとみに狂い、言葉ひとつで財産を投げ打ち、身を滅ぼした。
挙句の果てには、彼女を育てているはずの義父までもが、その妖しいまでの美しさに狂おしい視線を向ける始末であった。
当然、家の中は地獄だった。
義父の狂気じみた情愛に嫉妬した義母は、激しい憎悪をかぐやに向けた。嫉妬に狂った義母は、人が見ていない陰でかぐやを痛めつけた。着物の下、柔らかい肌には絶えず痣や擦り傷が絶えず、容赦ない虐待が日常的に行われていた。
だが、かぐやはそんなものに一向に興味がなかった。
群がる男たちの甘言も、義父の薄汚い視線も、義母の陰湿な暴力すらも、彼女にとってはただの鬱陶しい雑音に過ぎない。自分に狂う男たちをどこか冷めた目で見下しながら、日々募る鬱憤にイライラを募らせる、勝気で気難しい女——それが、都を騒がせる美貌の姫の正体であった。