第9章 かぐや姫の物語
「、昨日恵と悪いことしたでしょ」
「え…、あ、えっと、」
不意を突かれた問いかけに顔を赤くし、言葉を詰まらせる香久夜に、五条はなおも追及するように言葉を重ねた。
「は恵のこと、好き?」
「えっと…」
少しだけ視線を迷わせた香久夜だったが、次の相槌は迷いのない、力強いものだった。
「うん、好き、です」
その真っ直ぐな言葉を聞くと、五条はぽんぽんと彼女の頭を優しく撫で、少し口角を上げた。
五条の六眼は、ここにきた時から目隠しの奥で鋭い光を宿していた。
五条はソファに腰を下ろし、香久夜と目線を合わせた。長い足の間に彼女を入れ込むようにして両手を取り、正面から向き合う。
「でも、気づいてる? 自分の呪力の変化」
「…え?」
真剣な声色に困惑した香久夜は、促されるまま自身の体内へと意識を向けた。だが、暴走の気配もなく、呪力は穏やかに循環しているように思える。
「えっと、特に変わったところは…」
五条はこの2週間、各地の文献やデータを漁って導き出した「かぐや姫」の呪力に関する仮説を、目の前の現象と照らし合わせていた。胸中でひとつの確信を得た彼は、そのまま左手を伸ばして香久夜の華奢な体をぐっと引き寄せた。腰に手を回し、隙を込めてそのまま唇を重ねる。
「んむっ…!?」
突然の行動に香久夜は息を飲んだ。驚きから身を引こうとするが、五条は後頭部に回した手でしっかりと頭部を固定し、逃げ場を奪う。有無を言わさず押し込まれた舌が深く絡み合い、何度も舌を交わされ、口内をなぞられる。
「んぅ…っ、ふぁ…やっ、」
(な、なんで…?!五条先生にキスされてるの、っ)
香久夜は両腕で五条の胸を押して抗おうとしたが、その体はびくともしない。逃れられない圧迫感と強い熱に、次第に思考が快感に飲まれていく。
(や、膝に、力入んない…っ)
背筋を突き抜けるような衝撃に抗いきれず、香久夜は足を震わせて、五条の体にもたれかかった。