第8章 姫の呪い
香久夜は、自分からゆっくりと腰を引き寄せ、彼の背中に回した腕にギュッと力を込めた。
「んっ……っ、っ」
「あっ、恵く、ん、」
香久夜はそのまま両手を恵の両腕に添え、腰を自ら動かした。
「ん……っ……恵くん、もっと来て……」
「……っ! ハル、お前……っ」
香久夜が示した素直な受容と包み込むような優しさは、恵の中にあった緊張と戸惑いを一瞬で溶かし去った。
香久夜主導で深まる繋がりに、恵が小さく息を飲んだ。そこからは、恵も自分の欲望のまま自らを動かした。
はじめのぎこちなさは影を潜め、恵は自分のペースを取り戻すように、ゆらゆらと深く、確実な足取りで腰を動かし始める。
「っ、んんっ、あ、恵、く……っ」
引き戻された深い熱に、香久夜の吐息が甘く擦れる。
ただ体温を交わすだけではない。自分たちの体が重なるたび、内側から溢れ出す呪力がが波のように押し寄せ、互いの隙間を埋め尽くしていく。
……あぁ、気持ちいい。
香久夜の体温と動くたびにグチュグチュ、と音を鳴らす膣壁に己の欲望を暴く。
恵の手が香久夜の手に重なり、指と指が強く絡め合わされる。
逃げ場のない快楽と、全身を包み込む圧倒的な愛おしさ。自分の下で熱に浮かされ、涙ぐんだ瞳で一途に自分を見つめ返してくる香久夜の姿に、恵の胸の奥で感情が限界まで跳ね上がった。
術師としての責任も、七海の警告も、これまで自分を縛っていたすべての言い訳が吹き飛んでいく。
「あん…っ、めぐみく、ん……っ」
「………、」
恵は香久夜の首筋に額を押し当て、猫が匂いをつけるみたいに、顔を埋め、擦れた声で、祈るようにその言葉を零した。
「……好きだ、」
「好きだ、、好きだ…っ」
一度口から溢れ出た想いは止めようもなく、恵は何度も、何度も縋るようにを繰り返しながら、その愛を刻みつけるように続けた。
「…っ、めぐみくん、っ」
その言葉を受け止めた瞬間、香久夜の心根にあったすべての孤独と不安が溶けて消えた。自分は道具なんかじゃない。目の前にいるこの男の子に、ただ一人の女の子として愛されているのだと。
二人は互いの熱と呪気を溶かし合いながら、誰にも邪魔されない愛の深淵へと、どこまでも二人で堕ちていった。