第8章 姫の呪い
…あと、すこし、あと少しで気持ち良くなれる気がして、涙で視界が歪む中、私は夢中で指を動かし続け、自身の出す甘い喘ぎ声と熱気に包まれていた。
「んっ…めぐ、みくん……っ、」
——その時。
カチャリ、と静かに部屋の襖が開く音がした。
「……ッ!?」
浴衣を濡らした濡れ髪の恵くんが、そこに立っていた。
脱衣所から戻ってきた彼は、布団の上で着物を乱し、自らの手で熱を鎮めようと必死に喘いでいる私の姿を——その深い瞳で、真っ直ぐに見つめていた。
部屋の中に満ちる、私から溢れ出た甘く澄んだ呪気の匂い。
「あ、め、恵、く…っ」
指を止め、涙目で見上げる私。
恵くんの視線が、私の濡れた指先と、露わになった太もも、そして赤く染まった顔へとゆっくり滑っていく。
一瞬の静寂。
シャワーを浴びて冷ましたはずの恵くんの体温が、目に見えるほどの凄まじい熱量となって跳ね上がるのが分かった。
「……お前、俺がいない間に…何やってんの」
低く、掠れた声。
恵くんはゆっくりと部屋に入ると、後ろ手で隙間なく襖を閉めた。
「ご、ごめんなさ、っ」
恵くんの瞳から、静かな狂気が揺らめいていた。
その瞳から逃げようとする私の足首を恵くんは掴むと、力任せに自分の方へと引き寄せ、覆いかぶさるようにして私を布団へ押し倒した。
「……もう遅い。七海さんの言うことなんか、知るか」
耳元で囁かれた熱い言葉とともに、今夜の逃げ場のない、激しすぎる夜の火蓋が落とされた。