第8章 姫の呪い
その日から、恵くんはどこか吹っ切れたように、私との距離をぐんぐんと詰めてくるようになった。
昼間の七海さんの前では今まで通りの「素っ気ない護衛」を演じているのに、二人きりになった途端、彼の体温が容赦なく私を侵食していく。
夜、二人で居間の小さなテレビを見ている時もそうだった。
私が座布団の上に座っていると、恵くんは後ろから私の体をすっぽりと抱きかかえ、自分の顎や頭を私の肩のあたりにちょこんと乗せてくる。
「め、恵くん…画面、見づらくない?」
「別に。見えてる」
低く吐き出される息が首筋に触れ、私はテレビの内容なんて一切頭に入らなくなってしまう。
お風呂上がりには、当たり前のように毎回ドライヤーで髪を乾かしてくれる。
指先で丁寧に毛先をすいてくれたかと思えば、
「……手、小さいな」
なんて何でもないことみたいに呟いて、脈絡もなく私の手を自分の大きな手で包み込んで握ってきたりする。
彼の指の隙間に私の指が挟み込まれるたび、手のひらから熱がじわじわと体中に伝わっていく。
「(し、心臓、持たない…っ)」
自分のキャパがオーバーしてるのにも気づけないなか、寝る時間になると、彼は迷うことなく自分の布団の中へと私を招いた。
「おい、何一人で寝ようとしてる。こっちこい」
「え、でも……布団、二つあるし、!」
「いいから」
呆気なく腕を引かれ、私は彼の布団の中へと引きずり込まれる。