• 小
  • 中
  • 大
  • テキストサイズ

呪術回戦ー八月の忌み子ー

第8章 姫の呪い





「っ……!」


香久夜が息を呑む暇すら与えず、恵は彼女の顎を指先ですくい上げると、そのまま迷うことなく自分の唇を重ね合わせた。

コロコロ、と音を立てて香久夜の手からシャープペンシルが転がり落ちる。


「むっ、んん……っ!?」


触れるだけのキスではない。
満月の夜の暴走からまだたったの二日。あの夜の圧倒的な密着と高揚を身体が覚えているのか、重なる唇の隙間から滑り込んできた恵の熱い舌が、香久夜の口内を甘く探り当てる。


唇が触れ合った瞬間、香久夜の奥底から甘く高純度な呪気が揺らめき、恵の体内へと流れ込んでいく。


ゴクっ…と恵は小さく喉を鳴らすと、逃げようとする彼女の後頭部を大きな手で抱え込み、さらに深く、息が詰まるほどの吻を食んだ。


「んっ、ふ…あっ…っ」


ようやく唇が離された時、香久夜の瞳は涙で潤み、真っ赤になった顔で小さく肩で息をついていた。

口元からうっすらと伸びる銀の糸を、恵は自分の親指の腹で拭うと、愛おしそうに舐め取る。


「な、なに、するのっ! 恵くん、急に…っ」


混乱と恥ずかしさで声を震わせる香久夜に、恵は少しだけ唇の端を上げ、どこか意悪く、けれど甘い温度を含んだ瞳で見下ろした。


「…何って。お前が隙だらけだったからだろ」

「す、隙って…私は普通に勉強をっ!」

「口開けてぼーっとしてた。警戒心が足りないんじゃないか?」

「そんなの、恵くんが近すぎるからっ」

「言い訳するな」


恵は香久夜の赤くなった耳たぶを指先で軽く弾くと、そのまま体を寄せて彼女の耳元にフッと熱い吐息を吹きかけた。


「七海さんが言ってたろ。『教え合いは学習の近道』だって。……お前が国語集中できないなら、こうやってペナルティ与えてやった方が覚えるんじゃないか?」

「へ、屁理屈!」
「文句があるなら早く全問解け。」


先に飯食ってる、と部屋を離れた恵のペースに完全に巻き込まれ、逃げ場を失った香久夜は、赤くなった顔を両手で覆うことしかできなかった。
/ 200ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp