第7章 葛藤
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「ただいま〜」
ドカドカと激しい足音と共に、大量のガリガリ君の袋を抱えた真希が玄関を開ける。
「え、恵なんでお前廊下にいんの、お出迎え?」
「トイレです。」
「って!なんでお前泣いてんだ!憂太!お前何した!!」
「ち、違います真希さん! 泣いてないです、これはその、良い方の涙で……っ!」
「涙じゃねぇか!」
「ツナマヨ!」
あたふたと弁明する香久夜にパンダがのしかかり、棘が「おかか!」と横でヤジを飛ばす。
静かだった時間が一瞬でまた明るく騒がしいものに変わった時。
すっと冷ややかで静謐な「空気の壁」がリビングへ差し込んできた。
低く、硬質で落ち着いた大人の声が響く。
「…静かにしなさい。騒ぐならドアを閉めてからでお願いします。」
廊下の影からリビングへ足を踏み入れたのは、隙なく仕立てられた三つ揃えのスーツに身を包んだ、見知らぬ長身の男だった。
特殊な形状のメガネの奥から伸びる視線は鋭く、片手には大きなビジネスバッグを抱えている。
「あ……あの、どちら様ですか…?」
急な大人の登場に、香久夜は思わず背筋を伸ばし、その圧倒的な佇まいに体を強張らせた。
男は香久夜の前に進み出ると、静かに一礼した。
「あなたがかぐや…いえ、香久夜さん、ですね。」
「そう…ですけど」
男は応じず、メガネの奥の冷徹な眼光で、彼女の足先から頭のてっぺんまでを舐めるように、品定めするように静かに滑らせた。
その視線に香久夜は遠慮がちに足先を揃える。男は、かぐやのまだうっすらと涙の痕が残る瞳を見つめる。
呪力の乱れ、肉体、そして精神的な未熟さ。そのすべてをものの数秒で冷静に、かつ正確に計測していく。
香久夜はその品定めするような無言の視線と、彼が纏う本物の大人の圧に息を呑み、思わず身をすくませた。
「……ハァ」
ひと通り観察を終えると、男は短くため息を吐き、胸ポケットから手帳を取り出しながら言葉を継いだ。
「一級呪術師の、七海と申します。五条さんから申しつけられ、今日からあなたの家庭教師になりました。どうぞよろしく。」
「「か、家庭教師……!?」」